静岡大学サスティナビリティセンター

2024.02.28

食品会社として、環境問題と向き合う~山梨罐詰株式会社~

皆様、お久しぶりです。Connect17です!
前回はSDGsの16番「平和と公正をすべての人に」を軸に、大学で街頭インタビューを実施し、選挙について取り上げました。

今回は分野を変え、12番「つくる責任 つかう責任」に着目した記事となっています。実際に取り組まれている企業とサークルに連絡をとり、取材してきました。メンバーも初めての取材でドキドキでしたが、取材したからこそ分かったこともあり、ボリューム満点の記事になっています。ぜひ最後まで御覧ください。
第一弾は静岡市清水区の興津にある、山梨罐詰株式会社さんについて紹介します!

山梨罐詰株式会社とは!?

1933年創業、「まごころを詰めよう」をモットーに缶詰やレトルト食品を製造しており、静岡釜揚げしらす缶詰やSASUNI COFFEE JELLY「YORU」などを自社製品として販売しています。

興津川や駿河湾などの豊かな自然を守るため、積極的に環境保護活動に取り組んでいます。
その結果、この取り組みが認められ、第11回 しずおか新エネルギー大賞 静岡県知事賞や第1回 食品産業もったいない大賞 農林水産大臣賞などを受賞しています。

環境に対する取り組み

山梨罐詰さんでは、「ゼロミッション活動」という、工場内で発生した廃棄物を工場の敷地内ですべて処理して活用することを目標に廃棄物処理を行っています。具体的にどんなことをしているのでしょうか?担当の松村さんにお話を伺いました。

■ きっかけ
廃棄物に最初に取り組むきっかけとなったのは、1958年に制定された水質保全法と工場排水規制法でした。これらの法律によって、工場で発生した排水をそのまま河川に放出することが禁止となりました。そこで、社内に排水処理施設を作り、排水を規定のBOD(生物化学的酸素要求量) 濃度まで下げてから、興津川に放出するようになりました。

排水処理施設で微生物に酸素を供給するために、排水をかき混ぜている。

■ 廃液シロップを活用した発電

当社では果実入りのフルーツゼリーを生産しています、原料の果実は海外から輸入しており、シロップとともに1号缶(フルーツ1.7kg、シロップ液1.3kg)に入っています。ここで問題になるのが、このシロップ廃液の処理でした。シロップの甘みをゼリーに活用することも考えたのですが、金属のにおいが含まれているため、断念せざるを得ませんでした…

そこで、シロップ液を廃液として処理する必要がありました。しかし、シロップ廃液のBODは150,000 mg/Lであり、当社の一般的な工場排水の1000 mg/Lに比べるとかなり高く、排水処理場の負担が大きくなりました。その結果、排水処理の過程での消費電力や余剰汚泥の発生量が増加し、排水処理に関わる経費が増大してしまいました。

ここで発電が行われている。

そこで、シロップに含まれる大量の有機物を菌でメタンに分解し、このメタンガスを用いて発電することで、逆にエネルギーを生み出すことができるのではないかと考えました。発電で発生した熱の利用も行っており、製造で利用する温水の生成などに利用されています。

■ そのほかの取り組み

当社では排水処理で発生した汚泥の有効活用にも取り組んでいます。汚泥はそのままでは大量の水分を含んでいるため、肥料にするにしても輸送コストが増えてしまいます。そこで、工場内で汚泥を乾燥させ、重さを六分の一まで軽くすることで、輸送コストが減るほか、窒素の含有率や保存性を高めることができます。今後は「ゼロミッション活動」の実現に向けて、汚泥をメタン発酵に利用できないかと開発を進めています。

乾燥した汚泥。ホロホロしていて、無臭だった。

■ 最後に一言

私は15年ほど前から当社の環境維持に携わってきました。その時から、環境のため、会社のためと考えて行ってきたことが、たまたまSDGsと結びついたのだと思います。私が思うに、SDGsを意識しすぎると、思考が狭まってしまい、本来今やらなければならないことが後回しになってしまうことがあります。SDGsは目的ではなく手段の一つと考え、会社の課題を乗り越えるために必要なことは何か常に考え行動することが大切だと思います。

取材してみて

松村さん、貴重なお話をありがとうございました。今回の取材で、初めて山梨罐詰株式会社さんを訪問させていただきましたが、もっとも心に響いたのは、プロジェクトを成功させるためには周囲の協力者を巻き込むことが大切であるということでした。これもすべて松村さんが研究という仕事に情熱をもって取り組んでいるからではないか、とお話する姿から感じました。もちろん、研究だけでなく、他の職種でもモチベーションを高く保つことは成功のキーポイントであると思いました。

また、「SDGsは目的ではなく手段である」というメッセージも印象に残りました。利益を求める会社というなかで、研究職をつづけているからこそ出てくる言葉だと感じました。今の社会の流れの中で、自分たちの問題を解決する方法を見つけるという姿勢はいつの世も大切なことであると思います。私も研究職を目指しているので、取り組んでいる内容だけでなく、研究に対する姿勢も含め、とても参考になる取材になりました。

重ねてのお礼になりますが、松村様、山梨罐詰株式会社様、今回の取材にご協力いただき誠にありがとうございました。メンバー一同お礼申し上げます。

参考にしたwebサイト

 

山田真理子(農学部応用生命科学科3年)

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